手持ち撮影で写真がブレてしまう経験は、カメラを使う人なら誰もが一度は通る道だ。特に暗い場所や望遠レンズでの撮影では、わずかな手の揺れが写真に大きく影響する。
そんな手ブレを軽減してくれるのが手ブレ補正機能だ。最近のカメラには「ボディ内手ブレ補正」「レンズ内手ブレ補正」そしてその両方を組み合わせた「協調制御」など、さまざまな方式が搭載されている。
この記事では、手ブレ補正の仕組みや各方式の違い、「○段分」という補正効果の見方、そして手ブレ補正を最大限に活かすコツを解説する。

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そもそも手ブレとは?なぜ起きるのか
手ブレとは、シャッターが開いている間にカメラが動いてしまい、画像全体がぶれてしまう現象だ。人間の手は完全に静止させることができないため、手持ち撮影では常に微細な揺れが発生している。
手ブレが目立ちやすくなる条件は以下の通りだ。
- シャッタースピードが遅いとき(暗い場所、低ISO設定時)
- 望遠レンズを使っているとき(画角が狭いほどブレが目立つ)
- 高画素カメラを使っているとき(微細なブレも記録してしまう)
- 体勢が不安定なとき(片手撮影、中腰撮影など)
一般的に「1/焦点距離」以上のシャッタースピードを確保できれば手ブレを防げるとされている。たとえば200mmのレンズなら1/200秒以上が目安だ。手ブレ補正は、この限界を超えてさらに遅いシャッタースピードでもブレのない写真を撮れるようにしてくれる技術だ。
手ブレ補正の2つの方式
レンズ内手ブレ補正(光学式IS/VR/OSS)
レンズ内手ブレ補正は、レンズの中に搭載された補正レンズ群を手ブレと逆方向に動かすことで、センサーに届く像のブレを打ち消す仕組みだ。
キヤノンでは「IS(Image Stabilizer)」、ニコンでは「VR(Vibration Reduction)」、ソニーでは「OSS(Optical SteadyShot)」と呼ばれている。
- メリット:ファインダー像自体が安定するため、構図が決めやすい。望遠レンズとの相性が良い
- デメリット:レンズごとに補正機構が必要なため、レンズのサイズと価格が上がる。手ブレ補正非搭載のレンズでは効果がない
ボディ内手ブレ補正(IBIS)
ボディ内手ブレ補正(IBIS = In-Body Image Stabilization)は、カメラのイメージセンサー自体を手ブレと逆方向に動かすことでブレを補正する仕組みだ。
ボディ内手ブレ補正の最大のメリットは、どんなレンズを装着しても手ブレ補正が効くということ。手ブレ補正非搭載の単焦点レンズやオールドレンズでも、ボディ側で補正してくれるのは心強い。
現在の主流は5軸手ブレ補正で、以下の5つの方向のブレに対応している。
- ヨー(水平回転方向のブレ)
- ピッチ(上下回転方向のブレ)
- ロール(光軸周りの回転ブレ)
- X軸シフト(水平方向のずれ)
- Y軸シフト(上下方向のずれ)

協調制御とは?ボディとレンズの連携
最新のカメラシステムでは、ボディ内手ブレ補正とレンズ内手ブレ補正を同時に動作させて、より強力な補正効果を得る「協調制御」が実現されている。
キヤノンのEOS Rシリーズでは、RFレンズとボディの協調IS制御により、組み合わせによっては最大8.5段分もの補正効果を実現している。ソニーやニコンも同様に、対応レンズとの組み合わせで補正効果を拡大する仕組みを採用している。
協調制御では、ヨー・ピッチ方向のブレはレンズ側が、ロール・シフト方向のブレはボディ側が担当するなど、各方式の得意分野を活かした分担が行われている。
「○段分」の手ブレ補正効果とは?
カメラやレンズのスペック表には、手ブレ補正効果が「○段分」と表記されている。この「段」とは何を意味するのだろうか。
写真の露出における「1段」は、シャッタースピードで2倍の差を指す。たとえば5段分の手ブレ補正があれば、本来1/250秒のシャッタースピードが必要な場面で、理論上は1/8秒でもブレずに撮影できる計算になる(1/250→1/125→1/60→1/30→1/15→1/8で5段分)。
ただし、カタログ上の補正段数はメーカーの測定条件下での数値であり、実際の撮影では個人差や撮影条件によって効果が変動する。カタログ値の7〜8割程度が実用的な効果と考えておくのが安全だ。
手ブレ補正はあくまで「カメラ自体の揺れ」を補正する機能であり、「被写体のブレ」(被写体ブレ)は補正できない。動いている子供やスポーツ選手を止めて撮りたい場合は、十分なシャッタースピードが必要だ。
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メーカー別の手ブレ補正技術
キヤノン(Canon)
レンズ内IS(光学式手ブレ補正)の歴史が長く、ボディ内手ブレ補正との協調制御にも積極的。EOS R5 Mark IIなどでは協調IS制御で最大8.5段分の補正効果を実現している。
ソニー(Sony)
α7シリーズでは5軸ボディ内手ブレ補正を搭載。レンズ内補正との連動にも対応しており、上位機種では7段以上の補正効果を達成している。動画撮影向けの「アクティブ手ブレ補正」モードも搭載。
ニコン(Nikon)
レンズ内VR(手ブレ補正)の実績が豊富。Z8やZ6IIIなどのミラーレス機では、ボディ内5軸VRとレンズ内VRのシンクロVR(協調制御)に対応。6段分の補正効果を実現している。
OM SYSTEM
マイクロフォーサーズの強みを活かし、ボディ内手ブレ補正で最大8段分という業界トップクラスの補正効果を実現。OM-1 Mark IIでは手持ちで2秒前後のスローシャッターも可能とされている。

手ブレ補正を最大限に活かすためのコツ
正しい構え方を意識する
手ブレ補正があっても、カメラの構え方が悪ければ効果は半減する。両脇を軽く締め、左手でレンズの下を支え、カメラを顔に密着させて安定した姿勢で撮影しよう。正しい構え方をするだけで、手ブレ補正の効果を大幅に引き出せる。立って撮影するときは、足を肩幅に開いて重心を安定させるのも基本だ。
壁や柱を利用する
周囲に壁や柱があれば、体や肘を預けるだけで安定性が格段に向上する。手ブレ補正と組み合わせることで、さらに遅いシャッタースピードでの撮影が可能になる。
連写で成功率を上げる
限界に近いスローシャッターで撮影する場合は、数枚連写して一番シャープな1枚を選ぶという方法も有効だ。特に望遠レンズでのスローシャッター撮影では、3〜5枚連写して選別するのが実践的なテクニックになる。
三脚使用時は手ブレ補正をオフにする
三脚に固定しているときは、手ブレ補正をオフにするのが基本だ。手ブレ補正機構がカメラの微細な振動を拾ってしまい、逆にブレの原因になることがあるためだ。ただし、メーカーや機種によっては三脚検出機能を持つモデルもある。
よくある質問(Q&A)
Q. ボディ内手ブレ補正があれば、レンズ内手ブレ補正は不要?
望遠レンズでの撮影では、ファインダー像を安定させるレンズ内手ブレ補正の方が構図を決めやすい。ボディ内手ブレ補正だけではファインダー像は揺れたままなので、望遠撮影が多い人はレンズ内手ブレ補正も重要だ。
Q. 動画撮影でも手ブレ補正は効く?
効く。動画撮影では常に手ブレ補正が動作するため、むしろ動画の方が手ブレ補正の恩恵を感じやすい。ただし、歩きながらの撮影など大きな動きにはジンバルの方が適している。
Q. 手ブレ補正があればどんなに遅いシャッタースピードでも大丈夫?
いいえ、手ブレ補正にも限界はある。カタログ上8段分の補正効果を持つ機種でも、実際に8段分フルに効果を発揮するのは理想的な条件の場合に限られる。実用的には、カタログ値の7〜8割程度を目安に考えておくのが安全だ。また、補正効果はシャッタースピードが極端に遅くなるほど成功率が下がるため、三脚が使える場面では三脚を使うのが確実だ。
Q. カメラを選ぶとき、手ブレ補正の段数だけで比較すればいい?
段数だけで判断するのは危険だ。メーカーによって測定条件が異なるため、同じ「5段分」でも実際の効果に差がある場合がある。また、望遠域と広角域で補正効果が異なることもある。実際にその機種を使った人のレビューを参考にするのが、最も実用的な判断材料になる。
Q. 手ブレ補正がないカメラは買わない方がいい?
手ブレ補正なしのカメラでも、明るいレンズを使ったりISO感度を上げたりすることで手ブレを防ぐことは可能だ。キヤノンのEOS R8のようにボディ内手ブレ補正を省いた代わりに軽量化を実現しているモデルもある。レンズ内手ブレ補正付きのレンズと組み合わせれば実用上の問題は少ない。手ブレ補正の有無だけでカメラの選択肢を狭める必要はない。
まとめ
カメラの手ブレ補正は、「レンズ内方式」と「ボディ内方式」の2つが基本で、両方を組み合わせた「協調制御」が最も強力な補正効果を発揮する。補正効果は「段数」で表され、数字が大きいほど遅いシャッタースピードでの手持ち撮影が可能になる。
ボディ内手ブレ補正はどのレンズでも効くメリットがあり、レンズ内手ブレ補正はファインダー像を安定させるメリットがある。自分の撮影スタイルに合った方式を選ぶことが大切だ。
手ブレ補正の仕組みについてさらに詳しく知りたい場合は、キヤノン RF LENS WORLDやstudio9の解説記事も参考になる。
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