走り抜ける車、駆け回る子ども、疾走する電車――動いている被写体をただ撮ると背景も被写体もブレた写真になってしまう。そんなときに覚えておきたいのが流し撮りというテクニックだ。
流し撮りは、被写体の動きに合わせてカメラを振りながらシャッターを切ることで、被写体だけを鮮明にし、背景を流して躍動感あふれる写真を生み出す撮影方法。スポーツ写真やモータースポーツの現場で多用されるが、コツさえ押さえれば初心者でも挑戦できる。
この記事では、流し撮りの基本的な仕組みから、カメラの設定方法、練習の手順、よくある失敗と対処法まで、実践的にまとめた。ぜひ最後まで読んで、次の撮影で試してみてほしい。

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流し撮りとは?背景が流れる仕組み
流し撮りとは、動いている被写体に合わせてカメラを水平にパン(振る)しながらシャッターを切る撮影テクニックのこと。通常の撮影ではカメラを固定して撮るが、流し撮りではカメラ自体が動く点が大きく異なる。
シャッターが開いている間、被写体は画面内でほぼ同じ位置にとどまるため鮮明に写る。一方、静止している背景はカメラの動きによって横方向にブレて「流れる」ように写る。この対比が、写真にスピード感と臨場感を生み出している。
流し撮りが成功すると、主役の被写体がくっきり浮かび上がり、背景は横方向の線になって流れる。この表現はスマホではまず再現できないため、カメラならではの醍醐味のひとつといえる。
流し撮りに必要な機材
流し撮りは特別な機材がなくても始められるが、成功率を上げるために揃えておくと良い道具がある。
カメラ本体
一眼レフでもミラーレスでもOK。大事なのはシャッタースピードをマニュアルで設定できること。コンデジでもシャッタースピード優先モード(Tv/S)があれば十分に挑戦可能だ。
レンズ
被写体との距離によって焦点距離を選ぶ。道路脇で車を撮るなら70〜200mmの望遠ズームが使いやすい。運動会で走る子どもを撮る場合も、200mm前後あると背景が整理できてきれいに流れやすい。
一脚(あると便利)
水平方向のパンを安定させるために一脚を使うと、縦ブレが軽減されて成功率がぐんと上がる。プロのモータースポーツ撮影でも一脚の使用者は非常に多い。
手ブレ補正は「モード2」(流し撮り対応)に切り替えておくこと。通常モードのままだと、横方向のブレもカメラが補正してしまい、背景が流れない写真になってしまう。手ブレ補正がないレンズの場合はオフにしてしまっても問題ない。
縦方向のブレを抑える意味では、一脚を1本持っておくと構えが安定します。三脚ほどかさばらないので、移動しながらの撮影でも扱いやすい機材です。
流し撮りのカメラ設定
流し撮りの成否はカメラ設定で決まるといっても過言ではない。ここでは具体的な数値と考え方を紹介する。
撮影モード:シャッタースピード優先(Tv/S)
まずはシャッタースピード優先モードに設定しよう。流し撮りではシャッタースピードが最も重要なパラメータになるため、自分で速度を決め、絞りとISOはカメラに任せるのが効率的だ。
シャッタースピードの目安
被写体の速度と、どれくらい背景を流したいかによって変わる。以下は一般的な目安になる。
- 歩いている人:1/15秒〜1/30秒
- 走っている人・自転車:1/30秒〜1/60秒
- 一般道の車:1/60秒〜1/125秒
- 高速道路の車・電車:1/125秒〜1/250秒
- レースカー・バイク:1/125秒〜1/250秒(プロは1/60秒以下も使う)
初めて流し撮りに挑戦するなら、まずは1/60秒〜1/125秒あたりから始めるのがおすすめだ。シャッタースピードが遅いほど背景は大きく流れるが、被写体もブレやすくなるため、慣れてから徐々に遅くしていくのがよい。
AF設定:コンティニュアスAF
動く被写体を追い続ける必要があるため、AFモードはコンティニュアスAF(AF-C/サーボAF)に設定する。AFエリアはゾーンAFやトラッキングAFにしておくと、被写体を追いやすくなる。
ISO感度とF値
シャッタースピード優先モードであれば、絞りとISO感度はカメラが自動調整してくれる。ISO感度はオートで問題ないが、晴天の日中に遅いシャッタースピードを使う場合は光量オーバーになりやすい。そのときはNDフィルターを使って光量を減らすか、F値を絞って対応しよう。
ドライブモード:連写
流し撮りは1枚撮りでは成功率が低い。連写モードにしてシャッターを切り続けることで、タイミングが合った1枚を拾いやすくなる。高速連写よりも低速連写(5〜8コマ/秒程度)のほうがバッファに余裕ができて扱いやすい。

流し撮りの実践手順(5ステップ)
設定が整ったら、実際に撮影してみよう。以下の5ステップで流し撮りの基本動作を身につけられる。
ステップ1:撮影ポイントを決める
被写体が横方向に移動する場所を選ぶ。道路沿い、線路脇、運動場のトラック横など、被写体が真横に通過するポジションが理想的だ。斜めに向かってくる被写体はカメラの振りが複雑になるため、最初は避けたほうがいい。
ステップ2:構え方を確認する
足は肩幅に開き、腰から上を回転させるイメージで構える。腕だけで振ると動きがぎこちなくなり、途中で速度が変わりやすい。ゴルフのスイングのように、体全体でスムーズに回転する感覚を意識しよう。
ステップ3:被写体を追い始める
被写体がまだ遠くにいるうちからファインダー(モニター)で追い始める。シャッターを切る前から動きに合わせてパンしておくことで、シャッターを切った瞬間のパン速度が安定する。
ステップ4:シャッターを切る
被写体が真横に来たタイミングで連写する。ここで大事なのは、シャッターを切った後もカメラを振り続けること。野球のバットスイングと同じで、フォロースルーを止めると被写体がブレやすくなる。
ステップ5:結果を確認して調整する
撮影後は液晶モニターで拡大して確認する。被写体がブレていればシャッタースピードを速くする。背景が十分に流れていなければシャッタースピードを遅くする。この繰り返しで最適な設定を見つけていこう。
流し撮りでよくある失敗と対処法
流し撮りは失敗がつきもの。だからこそ事前に失敗パターンを知っておくと対処しやすい。
被写体も背景も全部ブレている
カメラの振りが被写体の速度と合っていない場合に起きる。パン速度を被写体の動きにぴったり合わせる練習が必要。また、シャッタースピードが遅すぎる可能性もあるので、まずは1/125秒あたりに上げてみよう。
背景が流れていない
シャッタースピードが速すぎるとこうなる。1/250秒以上ではほとんど背景が流れないため、1/125秒以下に下げてみよう。また、望遠レンズを使うと、同じシャッタースピードでも背景が流れやすくなる。
被写体は止まっているが上下にブレている
縦方向の手ブレが原因。一脚を使うか、腕を脇に密着させてカメラを安定させよう。手ブレ補正の流し撮りモード(モード2)を活用するのも効果的だ。
流し撮りの成功率はプロでも3割程度といわれている。最初から完璧を目指さず、たくさん撮って1枚の当たりを拾う気持ちで臨もう。100枚撮って5枚成功すれば、それは十分な成果だ。
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流し撮りの練習方法
いきなり本番で撮ろうとするとうまくいかないことが多い。以下の方法で練習を積んでおくと、本番での成功率が格段に上がる。
道路の車で練習する
歩道から道路を走る車を流し撮りするのが、最も手軽な練習方法。車は一定速度で走っているのでパン速度を合わせやすく、何台でも被写体が来るため繰り返し練習できる。
電車で練習する
踏切近くや駅のホームから通過する電車を撮るのも定番の練習だ。電車は速度が一定で軌道が決まっているため、構図を決めやすいメリットがある。
自宅でも練習できる
テレビ画面に映る映像や、扇風機の羽根を追う練習もパン動作のトレーニングになる。カメラなしでも、体の回転動作を意識して素振りのように練習するだけで感覚が身につく。

流し撮りをさらにレベルアップさせるコツ
背景を選ぶ
背景にカラフルな看板や木々があると、流れたときに美しいストライプ状の模様になる。単色の壁や空が背景だと流しても地味になりがちなので、背景の色彩も意識してポジションを選ぼう。
流し撮り+ズームで動感を加える
パンしながら同時にズームリングを回すと、放射状のブレが加わってさらにダイナミックな表現になる。ただし難易度が高いので、基本の流し撮りをマスターしてから挑戦するのがおすすめだ。
縦位置の流し撮りに挑戦する
横位置が基本の流し撮りだが、縦位置で撮ると背景の流れ方が変わり、新鮮な表現になる。被写体の上下のスペースが広がるため、空や地面を大きく入れた構図が作れる。ただし横方向のパンの安定が難しくなるため、一脚の使用を強くおすすめする。
被写体との距離を変える
近距離から流し撮りをすると、被写体が大きく写りダイナミックな写真になる。ただしパン速度が速くなるため難易度は上がる。逆に遠くから望遠レンズで流し撮りすると、パン速度がゆっくりで済むため成功率が上がり、圧縮効果で背景の流れも美しくなる。
後幕シンクロでストロボを併用する
暗い場所での流し撮りにはストロボが使える。後幕シンクロに設定すると、シャッターが閉じる直前にストロボが発光し、被写体だけを一瞬止めてくれる。背景は流れつつ被写体は鮮明に写るので、夜間のレースシーンなどで効果的だ。
Q&A よくある質問
Q. スマホでも流し撮りはできる?
シャッタースピードをマニュアル設定できるカメラアプリを使えば理論上は可能だ。ただしスマホは本体が軽くてパン動作が安定しにくいため、成功率はかなり低い。カメラ本体で練習してからスマホで試すとコツがわかりやすい。
Q. どの焦点距離が流し撮りに向いている?
70〜200mmの望遠域がもっとも扱いやすい。広角レンズだと被写体が画面内で小さくなり、背景も流れにくくなる。ただし広角で至近距離からの流し撮りは迫力ある写真になるので、上級者はあえて挑戦してみるのも面白い。
Q. ミラーレスと一眼レフ、どちらが有利?
最近のミラーレスはEVFの表示遅延がほぼなくなっており、流し撮りにも十分対応できる。トラッキングAF性能が高い機種(SonyのαシリーズやCanon EOS Rシリーズなど)は特にやりやすい。一眼レフは光学ファインダーで遅延ゼロのため昔から流し撮りに向いているとされてきたが、現在はどちらでも大きな差はない。
Q. NDフィルターは必要?
晴天の日中に1/30秒など遅いシャッタースピードを使いたい場合は必要。ND8〜ND64あたりを持っておくと、明るい環境でも露出オーバーを防げる。可変NDフィルターなら1枚で複数の段数に対応できるため便利だ。
まとめ
流し撮りは、シャッタースピードの設定と体の動かし方さえ覚えれば、誰でも挑戦できるテクニックだ。最初は失敗が続くかもしれないが、コツコツ練習を重ねていけば、躍動感あふれる1枚が撮れるようになる。
まずはシャッタースピード1/125秒、連写モード、コンティニュアスAFの3つを設定して、近所の道路で車を追ってみよう。成功したときの快感は格別なので、ぜひカメラを持って外に出かけてみてほしい。
流し撮りの技術をもっと深く学びたい方は、タムロンの公式サイト(流し撮りのコツ解説ページ)やNiSiのフィルターメーカーサイト(流し撮り入門)も参考になるので、あわせてチェックしてみてほしい。
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